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■シネエッセイ CINE ESSAY ホラーが苦手でもぜんぜん大丈夫!? 昼夜つくり続ける摩訶不思議なトマソン的建造物が超絶面白い!! 6月29日(金)公開『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』 |
■やめるべきか、見るべきか。ホラーが苦手なのに迷ったのは、世に知れた変てこな建築物がこの映画の舞台だったから。とはいえほとんど予備知識はなかったのだが、映画のもうひとつの主役であるウィンチェスターハウスは、結果的にほんとうに面白い建物だった。それはあの、「路上観察学会」の赤瀬川原平らが唱えた無用の長物的不動産「超芸術トマソン」を思い出させるものだった。ちなみに「トマソン」はプロ野球の読売ジャイアンツにかつて在籍したゲーリー・トマソンに由来する。大リーガーだった彼は4番バッターとして迎えられたものの結果を残せず、役立たずといえばトマソンということで無用の長物的不動産を赤瀬川らは「トマソン」と命名したのだった。そのトマソンをウィンチェスターハウスは彷彿させる。 ■映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』は有名な「幽霊屋敷」にまつわる実話をもとに描いている。建物は米カリフォルニアのサンノゼにいまも実在し、ミステリーハウスとして観光名所にもなっている。映画はオーストラリアに屋敷を再現して撮影が行われたが、ほんもののウィンチェスターハウスも一部使われているという。 ■映画の主人公サラ・ウィンチェスターは1862年、22歳の時にウィンチェスター家に嫁ぎ、まもなく愛娘をもうけるもわずか1か月で死亡。両親も相次いで亡くなり、とどめを刺すのが家業を継いだばかりの夫の死だった。莫大な財産を受け継いだサラは、これら不幸の連続を契機に1884年サンノゼに農家を購入し増改築工事を始める。作業は尋常ではなく、24時間365日、一日たりとも休むことなく、彼女の死までじつに38年間続いた。そのリフォームというのが、行きどまりとなった階段だったり、奥行きのない壁のようなクローゼットだったり、13個密集するように打ち付けられた洋服掛け用フックだったり…。まさにそれはトマソン的な無用の長物だらけの改築工事で、結果、8部屋だった屋敷は一時期、7階建て500部屋まで膨れ上がったという。のちの地震の影響もあって現在は4階建として残されている。 ■それにしてもなぜ増改築に憑りつかれたのか。サラは不幸のもとは家業にあると考えた。ウィンチェスター家は名前からもわかるようにライフル銃の製造で財を成した一族だった。銃によってどれだけの人々の命が奪われ不幸を招いたか。その霊がひとり残されたサラに憑りついて離れなかったのだ。ある霊媒師からの助言もあって、サラは増改築をすることで銃の犠牲となった人々のさまよえる霊を鎮めようとした。この映画は意外にも、銃社会米国に警鐘を鳴らすそんなホラー映画でもあった。 2018年6月27日 記 Text by NorikoYamashita |
ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷 WINCHESTER |
■Staff&Cast 監督:マイケル・スピエリッグ/ピーター・スピエリッグ 出演:ヘレン・ミレン/ジェイソン・クラーク/セーラ・スヌーク 2018年オーストラリア=米国(99分) 配給:REGENTS/ポニーキャニオン 原題:WINCHESTER 2018年6月29日(金)からTOHOシネマズシャンテほか ©2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved 公式サイト:http://winchesterhouse.jp/ |
■ウィンチェスターハウスとは?
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